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仙台地方裁判所 昭和24年(行)20号 判決

原告 田郷秀雄

被告 宮城県知事

一、主  文

被告が昭和二十三年十一月二十五日附原告に対してなした農地調整法第九条第三項の許可の取消処分中宮城県桃生郡広淵村字舟入二十一番田一反九歩に関する部分を取消す。

原告其の余の請求は之を棄却する。

訴訟費用は之を二分しその一を被告の負担としその余を原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「被告が昭和二十三年十一月二十五日原告に対してなした農地調整法第九条第二項の許可の取消処分はこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、原告は昭和二十二年三月二十日被告に対し原告所有の宮城県桃生郡広淵村字舟入二十一番田一反九歩及び同村字川南三百六十一番田一反九歩外二筆に対する訴外勝又実との間の賃貸借について農地調整法第九条第三項の許可の申請をなしたところ、被告は昭和二十三年五月二十六日附、字舟入二十一番及び字川南三百六十一番の二筆の田について右許可を為したけれども同年十一月二十五日右許可を取消した。しかしながら、右取消処分には何等正当の理由がなく違法であるから、その取消を求めるため本訴請求に及ぶと述べ、被告の主張に対して被告主張の誤認の事実は否認する。字川南三百六十一番が訴外勝又に売渡しになつたことは認めると答えた。(立証省略)

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、原告主張の事実のうち、冒頭から被告が原告主張の許可を取消した迄の事実は全部これを認める。しかしながら、被告は先に本件賃貸借が一時賃貸借であると誤認して右許可を為したが、その後調査の結果右賃貸借は一時賃貸借でないことが判明したのでこれを取消したのである。

仮りに右許可が錯誤に基くものでなかつたとしても字川南三百六十一番については昭和二十四年七月十五日広淵村農地委員会が訴外勝又実の申請によつて遡及買収計画を樹立しこれを買収した上売渡計画を樹立したが原告から異議の申立がなかつたので被告は同年十二月一日附をもつて売渡期日を昭和二十四年十二月二日と定め右勝又実に対して売渡の通知をした。従つて同訴外人において字川南三百六十一番の所有権を取得したのであるからこれに対する原告の本件請求は失当であると述べた。(立証省略)

三、理  由

原告の主張事実中冒頭から被告が原告主張の許可の取消を為した迄の事実関係は何れも当事者間に争がない。

被告は、先に原告が本件賃貸借解約許可申請を為した際本件賃貸借が特別の事由に基ずく一時賃貸借であると誤認したため右申請を許可したのであるが、その後調査の結果それが一時賃貸借でないことが判明したので、これを取消したと主張する。けれども、改正前の農地調整法第九条第二項但書にいわゆる特別の事由によりて一時賃貸借を為したること明なる場合においてはかような賃貸借については同条第一項第三項の規定はその適用がないのみならず、本件において被告が先に本件賃貸借の解約の許可を為すに当つて、該賃貸借を一時賃貸借と誤認したことについて、証人駒場弘及び勝又実の証言中右賃貸借が一時賃貸でなかつたとの陳述は信用できないし他には之を認めるに足る証拠がない。

けれども、原告主張の字川南三百六十一番の田について被告主張の通り買収の手続が完了したことについては当事者間に争がない。而して右買収の関係が係争中で未確定の状態にある等、その他特別の事情のない限り右買収処分は既に確定したものと認めるより外はないから、爾後原告は右農地に対する所有権を喪失し、原告は右田に関し本件許可の取消処分についてその取消を求めるにつき正当の利益を有しないといわなければならない。

以上の通りであつて、原告の本訴請求中字舟入二十一番田一反九歩に関する部分は理由があるから之を認容すべきであるけれども、その余の部分は理由がないから之を棄却すべきである。

よつて訴訟費用の負担については民事訴訟法第九十二条本文を適用して主文の通り判決する次第である。

(裁判官 松尾巖 上野正秋 片桐英才)

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